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はじまりの時代

第8回 1999年「準備」
~もっと走るためにさまざまな覚悟を決めた~

より深いビジネスインパクトを求めて

1999年は、キノトロープでしかできない仕事を進めた一年です。プロジェクトの巨大化に伴い、コンサルティングの時間や準備に多くの時間が費やされる様になっていきました。この時期をコンサルティングの経験を体系化して仕事に生かせるようになってきたと思います。コンサルティングは地味な仕事ですが、僕たちは日本のECの日の出も近いなと感じながら、そうした地道な作業を進めていきました。

この頃のインターネットビジネス

ビジネス的な側面では、日本の企業のインターネットに対する認識が急激に深まっていて、いよいよ本格的なフェーズに突入しつつありました。アメリカから、強力な業務コンサルティングチームが続々と進出してくる気配もありました。僕等は彼らと競争しようとは思いません。相手もよく心得ていて、多くの提携話をいただきました。彼らと共存共栄して、日本のWebに本当の意味での業界をつくっていきたい、それがキノトロープの願いです。

悲しいかな効果の出せるいいWebをつくる会社が少なすぎる日本では、まだ業界なんて呼べるものはないのです。業界ができていないから、稼げない会社が多いのです。才能のある人達がもっと集まってくる業界にするためにも、こつこつと効果のあるサイ トをつくって、企業に対して「Webサイトは収益を上げることができるんだ」ということを示していくしかありません。競争が始まるのはそれからの話しです。

「Web年鑑1999」発行

ビジネス的な動きもさることながら、クリエイティブについても僕等はキノトロープ独自のスタイルやロジックを外に向けて発信していくという作業を行ないました。特にデザインについては、僕等が考える「Webデザイン」を書籍という形に残るものとしてまとめ、公開しました。それが「Web年鑑1999」です。

少しだけ、僕等が考えるWebデザインというものについて話しましょう。僕等がデザインと呼んでいるのは、「ユーザーインターフェース」のことです。つまりユーザーが直接対面する表面的なサービスの部分。制作側の意思が唯一伝わるところです。その中には「グラフィックデザイン」や「ユーザビリティ(使い勝手)」といったものも含まれてきます。

ユーザーインターフェースというのは、「必然」であるべきだと思います。つまり「あるべきところにある」。たとえば建物のドアの位置、ビデオデッキの再生ボタンは、マニュアルを読まなくても誰でもわかりますよね。そういう「必然」性があるのです。 Webの場合、今でこそ「オンラインショッピングはL型ナビゲーションで検索はこの位置」といった共通の認識ができつつあるようですが、それらは全てWebサイトの目的に拠ります。このサイトではユーザーにどんな順番で何をしてほしいのか。それがはっきりしないと、ボタンひとつの位置でも絶対決まらないし、決めるべきではありません。

「キノトロープに発注したらデザインの話が3ヶ月後まで出てこない」と驚かれることがあります。だから僕等はコンペにも参加できないし、最初は理解されずに大変でした。こういう仕事のやり方は日本には馴染まないのでしょう。もともと出発点でそれを選んでいるのだから労は厭わないけれど、このやり方でずいぶんお客さんを減らしたと思います。でも最近は状況が変わってきて、逆にそういうアプローチが求められるようになってきました。これはものすごい変化だと思います。

現在は、とりあえずスタートラインに立てたかな、と思えるようになりました。僕等にとって憧れでもあったアメリカ西海岸のデザインスタジオ、東海岸のビジネスチームとの距離が縮まってきたかな、と。なぜなら、彼らが何を考えてどう動いてるのか、わかってきた実感があるからです。

準備が試される時

世間的な流れの変化、そして書籍や講演を通じて僕等がどういった考え方の元で実際の制作を行なっているかを公表していくことで、キノトロープ・ウェイは徐々に受け入れられるようになってきました。設立当初の1994年辺りでは考えられなかったことです。本当なら時代の変化を喜ぶべきなのでしょうが、僕等は逆に激しい危機感を覚えました。

「クライアントが勉強してきている」
制作者よりも、失敗をして痛い目を見たクライアントの方がビジネスのことは勿論、 インターネットのことを熟知しているという状態。「何をすべきかは知っている、実際にどうすればいいのか教えて欲しい」というクライアントの目つきは真剣そのものです。僕等はそんなクライアントと同じ土俵で闘うために必死で勉強し、必死でビジネスの提案をしていきました。志の高いクライアント達は要求も高く、僕等の成長を随分と助けてくれたように思います。

そしてこの年の夏、とりわけ血走った目つきのクライアントが僕等の事務所の門をたたきました。この訪問が、現在キノトロープの取締役でもある牧野さんの人生を変える訪問になります。

同志:42名

続く



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