第6回 1997年「成長」
~一つの実績は多くのチャンスを生み出した~
取材解禁
1997年はWebサイト制作のみの売り上げで、黒字を出した初めての年であり、雑誌等の取材を解禁した年でもあります。毎週のように取材があり、毎日のように制作に関する問い合わせがありました。サイト制作の本数もさることながら、膨大なページ数を量産しました。良くも悪くも、どんなサイトでも無難にこなせる様になり、この年の経験が、どんな状況でも制作出来る自信を与えてくれたように思います。
また「実験」から「実証」へと一歩ずつ確実に手応えを感じながら成長していた時代でもあります。つまり各プロジェクトにおいて、明確な目標を持って制作を行ったということです。
たとえば「有効な顧客リストの獲得」を目的に株式会社BMWジャパン、株式会社アートネーチャー等のサイトを立ち上げました。基本的な考え方は、有効な顧客リストの入手は、企業にとって最も重要なメディアへの要求であるということです。インターネットでは、マスメディアでは得られない有効な顧客リストを得ることが出来ます。ただし、これまでの他メディアと同様のやり方のままでは実現されません。以下にご紹介する、マスメディアでは成立し得ない方法によってのみ、有効な顧客リストが得られるのです。
BMWジャパンサイトのビジネスプラン
BMWジャパンのサイトで実際に行ったビジネスプランを紹介します。ユーザーの傾向が偏ったインターネット上で有効な顧客リストを入手するためにやらなければならないのは、徹底したユーザーの絞り込みです。直接販売できる可能性のある顧客のみ得ることを目的としたのです。
Z3という単一車種のキャンペーンサイトを制作し、はじめからこの車に興味のないユーザーを拒否しました。さらに、車をプレゼントするようなキャンペーンでなく、1週間程度のレンタルにする程度の低いインセンティブにしました。極めつけは、A4紙 で2ページ分もある長いアンケートに記入して貰うことによって顧客の絞込みを行いました。
以上の様な強烈な振るいをかけることにより、顧客リストの精度を高め、データ処理及び営業の負担を減らすことに成功しました。顧客を絞り込むことによって、営業が直接販売出来る顧客リストを得、直接的なアプローチが可能になります。
実績こそ最大のプロモーション
絞り込んだ顧客のアンケートは、ブラウザ上から関係者のみ確認することが出来ます。また最寄りの販社へはメールでも連絡が届きます。これにより、迅速な営業の対応を可能にしています。電話、ダイレクトメールに比べて成約顧客の1人あたりのリスト獲得単価が非常に低く押さえられることがインターネットならではのメリットであり、成約率の高さが営業のモチベーションを高める効果もあります。
クライアントの担当者にとっても、一つのキャンペーンサイトで小さな成功を収めることで、社内全体や上層部に対して大きな話をもっていきやすくなります。実績を見せていくことが一番なのです。それは僕等にも言えることです。Z3の成功を受け、僕等は528i等の車種毎のサイト制作を受注し、最終的にはBMWジャパン全体のサイトも公開しました。
ウェブデザインコンソーシアム発足
インターネットのビジネスの可能性を体感し実践していく中でも、業界全体の流れには非常に憂うべきものがありました。まだまだ、会社案内サイトがWebサイトだと考えている顧客の多さ、もっと憂うべきは制作者自身も同様の認識の会社が多かったことです。
1997年9月、この状況を憂う数人の仲間たちと共にウェブデザインコンソーシアムを発足させました。これは制作者のスキルアップと地位向上、インターネット自体の普及 を目的に始めたごく身内だけの集まりでした。インターネットビジネスのあり方と可能性を制作者自身がまず理解すること、それが僕の中でのテーマでした。
2000年に休止するまでの3年間で約8000人の会員を集め、「Web年鑑1999」の発行母体ともなったウェブデザインコンソーシアムは、初期のWeb制作者のために十分な機能を果たせたと思います。いつの日かまた、プロと呼べるレベルの会員だけで「ウェブデ ザインコンソーシアム」を再度稼働させたいと考えています。
嬉しい悲鳴で忙しさのピークを迎えた1997年は、電気の消えることのない事務所に、27名のメンバーが集まっていました。
同志:27名
続く