こんにちは、キノトロープの濱田です。

この連載ではWeb担当者の皆様からいただいたお悩みに答えていきます。

本日のお悩みは下記です。

担当者が退職や異動で離れてしまったり、他の人が新たに就任した場合にも変わらず運用を続けることがWebサイト運営においては重要です。

いざ引き継ぎが必要となった時に、困ることが無いように普段の運用時から意識しておくべきポイントをお伝えします。

大前提として、引き継ぎ事項はドキュメントに残すようにしましょう。

口頭では何も残らないため、教わったことを忘れてしまったり認識の齟齬が起こってしまうおそれがありますし、メールやチャットだけでは日頃のやり取りが積み重なってしまい、必要な時に探しづらく・見つけづらくなってしまいます。

引き継ぎの際重要になる資料に設計資料や仕様書などがありますが、多くの場合これらは最新化されてないことがほとんどではないでしょうか。

日頃から更新が行われていれば苦労しませんが、常にこれを最新化するのはなかなか骨が折れる作業になります。

さらに、大部分は自分たちで更新していくことは簡単ではないでしょうし、都度ベンダーに依頼することになるかと思います。

しかしベンダー側も重い腰を上げて取り掛かることには変わりはないため、相応の時間とコストがかかるといったことが考えられます。

1年に1回など、定期的に資料を最新化することを案件・運用に組み込めることが理想です。

次に「何を引き継ぎするためにドキュメントを用意しておくのか」を考える必要があります。

最低限ドキュメント化すべきこととしては下記が挙げられます。

ベンダーや社内の人など、関連する会社ややり取りする関係者がいる中で「この範囲は誰とやり取りするのか」を明確にしましょう。

これを怠ってしまうと、困ったときに誰に訊いたらいいのかわからない、といったことが起こってしまいます。

誰が知っているのか、誰が詳しいのか。
いわば「連絡網」とも言えるでしょう。

ドキュメントという意味ではガイドラインや運用マニュアルも欠かせません。

普段の運用の中で一番関わりが深い部分になっていくので、しっかりとドキュメントとして引き継いでいく必要があるでしょう。

ただ、運用に慣れて使い方がわかるにつれて参照することが減ってしまったり、システムが改修されて使い方が変わっているもののマニュアルに反映できていない、ということがよく起こります。

手間とコストはかかってしまいますが、改修の際に都度マニュアルに反映することを怠らないようにしましょう。

そうすることで、少なくとも直近の運用においては「マニュアルにすべて載っている」という状態ができ、引き継ぎで生じる苦労の大部分はカバーできるのではないでしょうか。

しかし一方で、マニュアルの精緻化に注力するあまり、「最新化されてはいるものの内容量が多すぎてわかりづらい、見る気になれないマニュアル」になってしまわないようにも気を付けましょう。

担当者自身も内容を把握しておらず、困ったときに参照する索引になってしまっていることがほとんどです。

そのような背景には前任者が改修を繰り返して独自化されてしまっており、「なぜその改修を行ったのか」「何をどう選んだのか」といった考え方が属人化され共有されていない、といったことがあるため、マニュアルをただ精緻化していくだけでは引き継ぎが行われたとは言えません。

運用者の想いも共有できるよう、余裕をもって引き継ぎ期間を設けることができればよいのですが、Web担当者の異動は突然であることが多く、必ずしも盤石な体制で行えるわけではないでしょう。

「困ったときにはこの人に訊こう」と頼れる相手を明確にしておくことで、クライアントが信頼できるパートナーとして常日頃から連携が取れることも重要な点となります。

退職や異動でこれまでの担当者が離れるだけでなく、新たな担当者が就任する場合についても考えなければなりません。

例えば、入社されたばかりの方などが運用を任され、慣れてもらう間もなく業務に入ってもらうといったこともあるでしょう。

そのような場合、追記を重ねて分厚くなってしまったマニュアルの内容をすぐに理解してもらう、半年ほど期間を設けてじっくりと引き継ぎを行うといったことは現実的とは言えません。

また、引き継いだとしても半年に1回程度しか使わない機能などもあるでしょう。

であれば、引き継ぎそのものをなるべく簡潔にできる方法について考えていく必要があります。

そういった中で、これだけは押さえておけばスムーズな運用が行えるのではないか、といったポイントはなんでしょうか。

通常、WebサイトのリニューアルのタイミングでCMSの使い方などのレクチャー会を行いますが、担当者の入れ替わりが発生したタイミングでも実施することがあります。

内容としてはマニュアルに記載のあるものと同様のことを説明しますが、実際の運用の中で躓いてしまう可能性がある部分を共有することで、新たな担当者への引き継ぎ後も問題なくスムーズに運用できることを目指しています。

その他、ツールの操作方法などはマニュアルやドキュメントによって引き継ぐことができますが、「どうしてこの手順なのか」「何のための機能なのか」といった前任者の想いまでは引き継ぐことはできません。

そんなとき「何のために」が明確であるとストーリーとして理解しやすく、ツールを正しく使うことができると考えます。

また、担当者によっては使い方のレクチャーだけでなく、プロジェクト発足当初の要件定義書、さらには提案書の内容から説明し理解を促すこともあります。

Webサイトを作った制作会社も交えての「どうして導入したのか」「こういう使い方はどうか」といった情報の共有は不可欠でしょう。

普段クライアントのお話を伺っていて「ここのバリエーションをもう少し増やしてほしい」といった小さな要望をよくいただくのですが、「改修を行ったとして、後の運用に耐えられるのか」といったことは立ち止まって考えるようにしています。

一つ一つは小さな要望でも、それが積み重なったとき、新しく担当することになった次の運用者はうまく扱うことができる状態なのでしょうか。

CMSの仕組み自体をシンプルにしていかなければ長く運用を行うことが難しいと思いますし、ご相談をいただいた際にはただ要望を叶えるだけでなく、先のことを考えたときに最適であるか、もっとシンプルなやり方はないか、と思考し相談しながら検討を進めます。

引き継ぎで苦労しないようなシステムを作ることも重要ではないか、と制作会社の視点では考えています。

例えば、同じ検索窓でもページによって検索条件が違う場合、表面的な挙動では理解しづらく、どう動作しているのかといった点は設計書を見ないとわからないでしょう。

そういった差異を理解しやすい形にすること、また、実現は簡単ではないですが、マニュアルがなくてもWebサイトが作れる、必要な操作や次の作業がわかるCMSが構築できれば引き継ぎの負担も格段に減らせるのではないでしょうか。

引き継ぎが難しいシステムというのはユーザーにとっても使いにくいと感じるものなのではないかと私は思います。

運用に携わる担当者自身がどこに何があるのか、何がどうなっているのか分かっていないのであれば、そのWebサイトに初めて訪れたユーザーはそれ以上に分からないでしょう。

そのため、ユーザー目線で使いやすいWebサイトを作るためにも、引き継ぎが簡潔に行える仕組みを作ることは軽視できないと言えます。

退職や異動で人が離れたときに、セキュリティ面で気を付けるべきことが2つ挙げられます。

ひとつは、CMSであれば退職者のアカウントが残ったままになっていること。

もうひとつはサーバーへのアクセス制限を許可しているIPアドレスなどの整理です。

現状の運用に関わりのない人が未だアクセスできる状態というのは問題があるため、退職や異動で離れた人のアカウントを削除する必要があります。

また前任者が個人のメールアドレスを使用して一部のツールやサービスを契約して利用していることもあるでしょう。

担当者が入れ変わった際などは定期的な棚卸しを行い、「よくわからないものが残っている」という状態は避けるようにしましょう。

その他、CMSのロール権限が部署ごとに細かく分かれ過ぎている場合、異動や退職、組織再編のたびに改修が必要になってしまいます。

権限の変更にコストをかけても効果的とは言えませんし、運用者の混乱にもつながるおそれがあるので、あまり厳格に考えすぎず、汎用的に設定することをお勧めします。

異動や退職が発生した際の仕事の引き継ぎでは、下記の点が重要です。

改修の都度更新を行えば「マニュアルにすべて載っている」という状態が作れ、引き継ぎで生じる課題の多くををカバーすることができますが、設計書などの細かいものはアップデートしていくことも大変ですし、都度ベンダーや制作会社に依頼をするとコストがかかってしまいます。

運用者目線で使うマニュアル、Webサイトのガイドラインを優先し、できる限りアップデートしていきましょう。

引き継ぎが行いやすい、後任者も理解しやすい構築ができていれば担当者が入れ替わった際に困ることも少なく、Webサイトに訪れたユーザーも使いやすい、運用者とユーザーの両方に優しいWebサイトになるでしょう。

異動や組織再編が発生しやすい場合、不要なコストをかけずに済むようアカウントの権限を汎用的な設定にすることを推奨します。

何かわからないことがあったときに気軽に訊ける関係が築けているかこと、また、担当は誰なのかといった責任範疇が明確になっていることが大切です。

「何のためにこうなっているのか」といった部分は前任者、作った制作会社が一番詳しいはずです。

そのため、新しい人が入ってきた、組織が変わったなどがあればその都度レクチャー会を実施して、情報格差が生じないよう常に双方で最新の情報を握っておく、といったパートナー関係が一番重要ではないかと考えます。

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