WebサイトリニューアルのRFP作成について、前回はRFPに必要な3項目と事前準備データについて説明しました。
今回は、RFPに記載する様々な個別要望にフォーカスします。
前回の記事で、RFPの必須項目は「目的・目標」「スケジュール・予算」「対象範囲」の3つだけだとお伝えしました。加えて、現状に関するデータをセットで渡せば、よりスムーズに提案やコンペが進むことになるとも説明しました。
では、デザインに関する要望や、機能追加などの要望がある場合、RFPの段階でどのように伝えれば良いのでしょうか。
個別要望の書き方について、具体的に説明していきます。
Webサイトのリニューアルを行う場合、プロジェクト立ち上げの前段階で社内の関係者に対し、現状のWebサイトに関する不満や改善要望などをヒアリングしたり、アンケートを取ったりすることが多いのではないでしょうか。
(関係者と言っても普段からWebサイトの運用に関わっているメンバーだけではなく、運用にほとんど関わりのない営業担当など多数の部署・人までを含めます)
それ自体は、プロジェクト立ち上げの社内説得材料として必要な行為であることは理解できます。
また、Web担当者として改善に対する強い想いがあるのも十分理解できます。
しかし問題は、そこで出てきた「要望」を、クリアしなければならない条件=「要件」としてRFPに記載してしまうことです。
第1回の記事でも上記の通り伝えましたが、「どういったデザインにすべきか」「どのような機能が必要か」は、プロジェクトがスタートしてから検討や検証を重ねて決定することです。
常日頃からWeb制作に関わっている我々でも、仮説検証の繰り返しで、本当に必要な機能などは「やってみなければ分からない」ところも多々あります。
もし、指示した通りに制作してもらいたいのであれば、最初から「制作依頼」として伝えることをお勧めします。
その際は間違っても「御社の知見から、より良い提案があればお願いします」などと中途半端に提案を望む形にしないことです。
制作依頼であれば、システムRFPに近いものになりますので、選定基準も単純になります。
「要件を問題なくクリアしているか(出来そうか)」「価格が妥当か」「信頼できる会社か」を判断するだけです。
コンペを実施する比較的大きな規模のWebサイトリニューアルの場合、ただの「制作依頼」ではなく、共にプロジェクトを成功に導いてくれる「パートナー」を求めていることがほとんどです。
しかし、RFPに明確に「要件」と記載されていると、提案する側は多くの場合その要件に合わせた提案を行います。
(例えそれより良いと思われる提案があったとしても)
Webサイトに関するプロに対して、(乱暴な言い方ですが)アマチュアの意見をすべて「要件」として伝えるのではなく、クリアすべき条件=「要件」と「要望」を明確に分けて伝えれば、さらに良い提案につながります。
要件=リニューアル(企画・制作・運用)にあたり、クリアしなければならない条件
要望=発注側からの参考意見(提案に際し、考慮してもらいたい点。無視されても構わない)
要件と要望をこのように定義すると、一括りに「要件」とされていた項目も、以下のように分けることができます。
ご覧の通り、要件にあたるのはセキュリティ規定や連携など、システム面の内容であることが多いです。
プロジェクト外での社内ルールや、プロジェクト対象に出来ない箇所との連携など、多くは外部要因によります。こういった内容がある場合は、「要件」として記載しましょう。
一方、UIやデザイン、コンテンツなどは提案側からすると「要望」として捉えられることが多いです。
社内ヒアリングやアンケートの結果はこういった要望が多く集まると思いますが、そこは割り切って「要望」として伝え、プロの意見や提案を求めましょう。
さて、第1回、第2回、今回とお伝えしてきた内容を踏まえ、RFPに必要な項目を整理していきたいと思います。
RFPに「提案依頼事項」として記載すべき点は以下の通りです。
個別要件と個別要望の部分は、会社やプロジェクトの状況によって内容は変わってきます。
先ほど伝えたルールで記載してもらえれば問題ありません。
これに、現状データやコンペに関する内容などを追記すれば、「CMSを使ったWebサイトリニューアルのRFP」が完成します。
項目例は以下通りです。
ここまでで触れていない項目について説明します。
これらは形式的なものですが、提案にあたって現状データを提供することになりますので、NDA(秘密保持契約)を締結することをお勧めします。(弊社でもほとんどの場合、締結します)
どのような手続きを経て、いつ、どのような形で合否連絡をするのか。選考プロセスを明確に伝え、そしてその通り「実行」することが重要です。
選考後、プロジェクト開始までの各種契約締結で決める内容が多いと思いますが、こういった項目のうち、予め要件(条件)として提示しておいたほうが良いものは、この時点で伝えておくとスムーズに進みます。
このような考えでRFPを作成いただければ、各社から素晴らしい提案をしてもらえるのではないかと思います。少なくとも弊社は、気持ちよくスムーズに提案することができます。
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