すべては成果のために

消費行動のデジタル化が進む中で、お客さまにとってWebサイトは企業との「最初の接点」となり、その第一印象で企業が評価される時代になりました。

こうした変化に伴い、企業がWebサイトで売上などのビジネス成果をあげるためには、お客さま一人ひとりのニーズに応じて、必要な情報を必要なタイミングで提供するWebサイトの実現が必須となっています。

そこで今回は、CMSを活用し、どのようにユーザーニーズに最適化するべきなのか、One to Oneの実現方法について解説します。

CMSはWebサイトを更新するツールだと思われがちですが、重要なのは更新が簡単にできることではなく、「コンテンツを一元管理する」ことです。

ここで言うコンテンツとは、「ページ」ではありません。一つひとつのページを更新・運用することを目的とするのではなく、ページ内に複数存在するコンテンツをいかに一元管理するかがポイントとなります。

多くのCMSでは、更新粒度が「ページ単位」となっています。しかし、この管理方法では、訪れるユーザーに応じて最適なコンテンツを提供できません。

ユーザーごとに最適なコンテンツを提供するためには、「コンテンツ単位で管理する」ことが必要になります。ここで言うコンテンツとは、「人が認識できる意味のある内容の塊」です。

例えば、ホテルのプラン情報一覧ページでは、プラン情報がコンテンツに当たります。サムネイル画像、プラン名、プラン概要等、一つのプランを表す粒度が1コンテンツとなります。

粒度をコンテンツ単位で一元管理しておけば、プラン情報の一覧ページだけでなく、TOPページや新プランの情報ページ等、さまざまな箇所で同じコンテンツを表示することができます。また、プランの内容を修正するときも、1コンテンツを変更するだけで、すべての表示ページが更新されます。

このようにコンテンツ単位で一元管理することで「更新の手間を省く」メリットもありますが、本当の価値は、簡便化ではありません。たとえ管理する粒度をコンテンツ単位にしても、それがHTMLとして管理されていては意味がありません。

同じプラン情報でも、一覧ページでは「概要リンク」、TOPページでは「おすすめ」として、プランの詳細ページでは「詳細情報」を表示する等、表示場所に応じて適した表現や内容は異なります。

HTMLで管理されていては、これらすべてに対応することは物理的に不可能です。また、対応可能なHTMLを準備したとしても、今後作成する新しいページやメール等はカバーできません。ですから、コンテンツの粒度だけでなく、管理する内容も重要になります。

基本は、要素に応じて画像やテキストを管理し、HTMLとしての出力はCMSに任せます。こうすることで、TOPページであればTOPページのテンプレートに最適化されたHTMLとしてプラン情報が表示され、一覧ページでは一覧ページ用の見せ方、詳細ページでは詳細ページの見せ方ができます。

また見せ方だけでなく、どこまでの内容を掲載すべきかも表示するページ側に委ねます。一覧ページであれば概要を、詳細ページであれば詳細な内容を掲載します。これも、管理しているのはプラン情報だけで、ページによって最適な内容を抽出し、表示できるようになります。

コンテンツの粒度と管理方法をしっかり設定すれば、ページごとに最適な内容を掲載するだけでなく、Webサイトを訪問するユーザーごとに最適な表現で、最適なコンテンツを、最適なタイミングで提供することも可能になります。

まさにOne to Oneのコンテンツ提供です。

Webサイトに訪れる人は、さまざまな目的を持っています。

多様なニーズでWebサイトに来ているので、全員に対して同じページを表示していては、そのページ内で求めている情報をユーザー自身が探すことになり、見つけられないと離脱してしまいます。と言うより、そもそも探してくれさえしません。訪問してすぐそこに求めている情報が無ければ、すぐに離れていってしまいます。

今の時代、ユーザーニーズに対して「最適な情報(コンテンツ)」を「最適な表現」で提供するWebサイトであることが必要です。

また、ニーズに応じたコンテンツを手動で準備するのは現実的ではなく、コンテンツを一元管理してニーズに最適な情報を提供する仕組みが必要です。

それに最適なツールがCMSです。

ユーザーのニーズに応じて最適なコンテンツを提供するために、まずはユーザーニーズを知ることが重要です。

その上で、どのようにニーズを判別し、最適なコンテンツを提供するかを考えます。

Webサイトでは、訪れるユーザーのさまざまな情報を得ることが可能です。

例えば下記のような情報を得られれば、ユーザーに最適な情報を提供できるでしょう。

どのようなキーワードを引いてWebサイトを訪れたのかは、ユーザーがどのような問題を抱えているかの判断材料となります。

近年、Googleからの検索キーワードはなかなか取得できなくなってきましたが、そもそもどのようなキーワードに向けた入口を用意しておくかによって、ある程度推測することが可能です。

そして、外部からの検索だけでなく、もしサイト内検索を利用していたとしたら、その検索キーワードによってもユーザーが欲している情報を判断可能です(本来であれば、サイト内検索をしている時点で求めている情報が提供できていないので、検索させないで済むコンテンツの提供が必要です)。

閲覧履歴からは、ユーザーが何に興味を持っているかを判断できます。
例えば旅行サイトであれば、国内旅行なのか海外旅行なのか。海外旅行のページを見ている方は海外旅行に興味があるので、次回のサイト訪問時に、サイト全体が海外旅行に最適化されていれば嬉しいでしょう。

閲覧回数に関しては、初めて訪れたのか、常連なのかによっても提供すべきコンテンツが異なります。
例えばECサイトで考えますと、初回訪問の方へはサイトの使い方であったり、コンセプトであったり、そうした初心者向けのコンテンツを提供すべきです。

しかし、常連ユーザーとなると、そうしたことは既に承知の上で利用しているので、例えばお得に買えるクーポンや普段購入している商品への動線、新商品の情報がキャッチアップできる等、同じTOPページでも、閲覧回数によって提供すべきコンテンツが異なることが分かるでしょう。

閲覧デバイスは、主にスマートフォンで見ているのか、PCで見ているのか、はたまたゲーム機で見ているのか、使っているデバイスで見やすくなければなりません。これにはデバイスに応じて最適な表現となるよう、CMS側で判断することで解決できます。

また、今後新しいデバイスが登場したとしても、表示する表現方法と管理するコンテンツは別物ですので、表現を調整するだけで新しいデバイスに対応可能です。

顧客情報や購入履歴はとても重要な情報です。
顧客ランクや住所、年齢、性別などを元にしたコンテンツ提供や、購入履歴からおすすめする内容を判断できます。会員登録等が済んだ方に向けては、とてもやりやすいOne to One施策です。

すべてのキーを元にOne to Oneを行うには、膨大な量のコンテンツが必要です。

いくら細かく情報を取得し、コンテンツを提供しようとしても、そもそもコンテンツの量が少なければ、誰が見ても同じ情報しか提供できません。ですから、サイトの規模や特性、コンテンツ量を加味した上で、最適なOne to Oneレベルを検討すべきです。

One to Oneのレベル感では難易度が高いものから、大きく分けて4つの段階があります。

例えばAmazonのような膨大なコンテンツがあれば、さまざまな情報を元に完全なOne to Oneを行えるでしょう。AmazonのTOPページは現にマイページ状態です。

誰一人として同じTOPページは表示されません。これは膨大なコンテンツがあるからこそ成し得られることです。

顧客情報だけであれば、会員ランクに応じて規約等の見せ方の違いや、価格などの会員独自の内容、シークレットコンテンツ等が提供できるでしょう。ですが、これは常に顧客情報に応じ一人ひとりに対してコンテンツを変えるのではなく、ユーザーニーズへの対応をパターン化し、そのパターンに応じてコンテンツを提供するということです。一人ひとりのニーズをカテゴライズし、提供できるコンテンツ量に合わせて施策を検討します。

ただし、会員登録を求めないサイトは顧客情報を持っていません。そうしたサイトでは、閲覧回数や閲覧履歴に応じた最適化を行うといいでしょう。「このページをこれだけの回数閲覧しているから、こういったことに興味があるので、こんなコンテンツを提供しよう」といった具合です。

この閲覧回数と閲覧履歴だけでも強力なOne to Oneが可能です。

大前提として、コンテンツの量に応じて出し分けられる種類が限られます。また、保持している顧客情報もサイトによって異なります。

いきなりAmazonのようなOne to Oneを目指すのではなく、まずは有効に機能するOne to One施策をできるだけ早く構築することが重要です。ゆくゆくは各個人に最適なコンテンツを提供できるよう、表示対象や仕組みはCMSに任せ、Web担当者はコンテンツ制作に注力すべきです。

そして、どんなコンテンツを制作すべきかは、やはりユーザーニーズを起点に考えます。どんなニーズに対して、どんなコンテンツを提供するのか、One to One対応には、ユーザー(ユーザーニーズ)対応設計が重要となります。この設計自体が、Webサイト制作の要となります。

濱田 優

執筆者

濱田 優

執行役員

制作部 部長/プロジェクトマネージャー、システムコンサル

千葉県出身。2006年、オンデマンドCDサービス、音楽配信、CD全国流通・海外プレスの事業を立ち上げ。事業を売却し、全都道府県を巡る日本一周旅行へ。プログラマとして再出発し、書籍を2冊(『Zend Framework 2徹底解説』(秀和システム)、『JUnit速効レシピ』(秀和システム))出版。
現在は、システムコンサルとして事業会社様の問題解決を行うほか、大学や専門学校での講師、セミナー等での講演も務める。