安心できるプロジェクトとするための「発注者向けの要件定義」をテーマに、お伝えしていきます。
安心できるプロジェクトとはどういう状況か。
それは、スケジュール通り、予算通りにプロジェクトが進行し、目標が達成されることです。
では、安心できないプロジェクトとは、
など、費用や期間が予定と違ってくることではないでしょうか。
これらも要件定義に起因して発生する場合が多くあります。
実際に、遅延などの原因は50%以上が要件定義に起因しているといわれています。
そこで安心できる状況とするために、発注者側の要件定義へのかかわりかたが重要となります。決して要件定義は制作会社任せで完成出来るものではありません。
要件定義の前段階として、発注先選定のためのPRF作成が行われているかと思います。
その中で、
これ以外に要望・要求・要件を整理し、提示していると思います。その内容を基に制作会社が『要件』として定義を行っていきます。
『要件』は誰の要件かというと、『発注者の要件』なのです。
制作会社が作成するとしても、それは発注者側の要望を要件化したものです。
一般的にも要件定義の主体・責任は発注者側にあるとされます。
そのため、発注者側で「提示した要望・要求がどのように要件に落とし込まれているか」をしっかりとチェックし、抜け漏れがないか、また再度改めて、伝え漏れている要件がないか確認が必要です。
それを可能とするためには、発注者側で要件定義のタイミングにおいて、「確認をする時間の確保」が必要となります。
要件定義を進めるスケジュールでは打ち合わせの時間だけでなく、前後で確認を行うための時間確保が重要となります。
確認・チェックするべき内容も多くなるため、時間をとっていない場合、緩い確認となってしまいがちで、後から不足していた要件が出てくる可能性が高くなってしまいます。
また、要件定義には対象範囲、機能要件、非機能要件や、サイトとして必要なコンテンツの要件なども含め、確認する担当部署も複数となることも多くあります。
よって事前に確認や検討の担当者を定め、確認のための時間を確保しておく必要があります。
要件定義の決定主体は発注者側になりますが、Webサイトのリニューアルや新規構築においては、プロである制作会社側に最適な要件や不足を引き出してもらうことも重要となります。
発注者側から提示した内容と、ヒアリングなどからの要求や要望を、どのように要件化するかはWeb制作会社の腕の見せ所でもありますが、制作会社側によい要件定義を作成してもらうために、提示することが望ましい情報もあります。
1)ビジネス上の戦略、方向性
2)目的、目標
3)業務フロー
4)要望、要求、要件(MoSCoW分析など)
具体的な要望や要求の前に、制作会社にもビジネス上の戦略や方向性を、共有可能な範囲で伝えるとよいでしょう。
特に、Webサイト全体リニューアルなどの場合「会社全体」の話が大きく影響してくるためです。
コーポレートサイトであれば、ブランド訴求やビジョンなど会社方向とWebサイトの訴求内容が合っている必要があります。
製品サイトなど営業サポートサイトであれば、営業戦略や注力商品などがWebサイトに影響する場合があります。
そのため方向性が制作会社に理解されていなければ、的外れなアウトプットになる可能性も高くなり、そこにまた調整の時間がかかることもあります。
繰り返しとなりますが、企業としての目的・目標と、Webサイトでの目的・目標を提示することです。
例えば会員登録をリアルでも行うようなサービスを行っている場合、全体の会員登録数を 2倍、うちリアルでの登録 4割 / Web経由 6割などと具体的にしておく必要があります。
Webサイトで公開している情報についても社内ではいろいろな経路をたどって出来上がっている場合が多くあります。
品などを扱っている場合、商品開発の事業部の方が、基本スペック情報などを基幹システムに登録し、さらに広報や販促用の情報を付加し、写真素材などが追加されていきます。
その制作の業務フローも可能な範囲で提示するのがよいでしょう。
これは直接Webサイトとはかかわらないから関係ないという場合も確かにあります。
ですが、要件定義段階では漏れや、作ったはよいが実際の運用に乗せると不可能(または大変になる)といった状況をなるべく事前に判断できるようにするためです。
Webサイトリニューアルでは目的・目標にそった要件に対応していきますが、Webサイト全体をリニューアルするので、そのタイミングに合わせて、各部署からの細かな要望も出てくることがあります。
その場合、「要望なのか」「要求なのか」「必須とする要件」なのか、重要度・優先度も含めて会社内で整理をし、認識を合わせるのがよいでしょう。
そのうえで制作会社と費用やスケジュールを考慮し、最適な要求への対応を考え、要件として整理していくのがよいです。
その際、要件対象外とするものもあると思いますので、「対象外とした理由」や、「次のステップで対応を行うか」などを定め、それらを社内で認識統一しておくと問題が起こりにくくなるのでよいと思います。
Webサイトの全体リニューアルの場合、1部署ではなく多くの部署がかかわる場合も多いので、要望した機能が含まれていない、などが後から出てくると、対応が困難となってしまいます。
要件として対応するかのリストは制作会社に作成してもらい、場合によっては対応範囲も各部署とともに説明を受けるか、サイトリニューアルの担当部署の方から各部署に共有しておくことも重要となります。
安心するプロジェクトとするには、発注者側の社内の調整も重要となってきます。
要件定義のチェックポイントは3つあります。
1)必要な決定事項が提示されているか
2)提示した要望・要求への対応が明確化されているか
3)目的・目標の達成につながっているか
大きくまとめると以下4つのポイントとなります。
リニューアル対象とする範囲が具体化されているかです。
安易にサイト全体となっている場合は注意が必要です。『サイト』がそもそもどの範囲をさしているのか再確認を行い、明示してもらうのがよいでしょう。
対象範囲の一部ともなりますが、リニューアルの場合移行するページが明示されているか、
または、新規にページを増やす想定の場合その考慮がふくまれているかを確認するのがよいでしょう。
その際、素材や写真、イラスト作成などにつても、見積もりにどのように適応されるかなども確認しておくのがよいでしょう。
CMSを導入する場合であれば、CMSからページ作成できる内容がわかるか、
お問い合わせフォームや検索機能がある場合は想定している機能が含まれているか、
全体として現状ある機能が、想定なしに除外されていないか確認するのがよいでしょう。
一部専門的に知識も必要となってきますが、主なチェック事項としては以下となります。
こちらは、前の章で『制作会社へ提示する情報』として記載の要望・要求・要件にあたります。
この要望に対して「対応する、対応しない」または、「どのような方法で改題を解決するか」が明確化されているかを確認します。
最後に、初めに定義した「目的・目標の達成につながっているか」の確認が必要となります。
要件定義全体が少しずつ影響してくるものもありますが、要件定義を確認して、この内容でどのように目的・目標が達成できるのか、どのような要因がつながっている部分か判断できなければ、制作会社への確認が必須となります。
どうしても要件の詳細を詰めていくと当初の目的・目標から離れた内容も出てきますので、細かい話になるにしたがって、目標があいまいになってしまう場合があります。
そのため、何度も目的・目標に立ち戻って、適切か確認をする必要があります。
少しでも参考にしていただき、安心してプロジェクトを進めることができれば幸いです。