導入するCMSを選定する際に、必要なことは何でしょう?

まず、大前提として必要になるのは「導入の目的」です。

さまざまなWeb担当者とお話していると、「何となく便利そうだから」「業務効率化のために」といったあいまいな目的で導入される方が多いように感じます。そうした方はCMS導入にあたっての明確な基準がなく、営業担当者の薦めるまま導入したり、表面的な機能を元に便利そうなものを選んで導入し、本来目指すべき成果が得られないパターンがほとんどです。

CMS導入の際にまず考えるべきことが、「CMSを導入することによってWebサイトにどんな成果をもたらすべきか」です。しかもそれは、かなり明確に定義しておく必要があります。

例えば下記のような成果を初めに定義します。

ポイントは、上記の成果を「いつまでに」達成するかです。短期的に実現したいのであれば、CMS導入に時間はかけられません。今後の展望を含めて、どれくらいの期間でどれくらいの成果を実現すべきか、まずはその目標を掲げます。そして、その目標達成のために必要なツールとしてCMSがあることを念頭に、導入に取り組む必要があります。

成果によっては、CMS導入が最適な答えとは限りません。短期的な収益やアクセスを伸ばす目的であれば、LPを作り、広告施策を打ち出す方が効果的な場合もあります。今後の運用体制を含め、どんなWebサイトにすべきで、何を求めるのか、それによって導入すべきCMSが異なってきます。

CMSツールは世界中にたくさんあります。国内だけでも有名・無名、有償・無償等さまざまあり、CMSを選定する際は、その膨大な種類の中から選ばなければなりません。

そもそもの選定候補が適切かも判断が難しいところです。

大抵の場合は、「たまたまネットで見つけた」「営業さんが訪れた」「関連会社が使用している」「システム部門からの推薦」等受動的な理由や偶然の出会いから導入候補となる場合が多いようです。

中でもよく陥りがちなのが、CMSを「機能で選ぶ」考え方です。

「長期的に見ると、機能がたくさんあるCMSが良いだろう」という考えの基に、CMSを何点かピックアップして機能一覧を比較し、一番幅広いものを選ぶ考え方です。

一昔前であれば、CMS関連の技術はマチマチで、各社できること・できないことに特徴がありました。しかし現在のCMSは性能が上がり、各社できることはほとんど同じです。比較資料にもすべてに〇が付き、とても選べる状態ではありません。

機能は一緒でも、CMSのライセンス費は各社さまざまです。中にはライセンス費が1億円を超えるものから、数百万円のもの、無料のオープンソースCMSまであります。機能は同じなのに、なぜこれほど費用に開きがあるのでしょう?

それは、機能によってできることの「レベル感」が全く違うからです。

例えば、「指定した日に自動的に公開したい」との要求があったとします。これが成し得られるかを各社に問い合わせると、全社「できます」という回答があるかと思います。ですが、さまざまなCMSを扱った経験のある弊社からすると、この「できます」のレベル感は大きく異なります。

CMSによって、公開時間の指定が分レベルでしか設定できないものから秒単位で設定できるものまでさまざまです。また、どれだけ正確な時間で公開されるのかも異なります。

例えば4月1日 0時0分0秒で公開予約したとしましょう。その時間に確実に公開されるCMSもあれば、その時間から公開処理を行い処理が完了した段階で公開されるCMSもあります。

4月1日 0時0分0秒に設定したはずが、処理が完了したのが4月1日 0時0分1秒であれば、1秒のズレが生じます。1秒と言えば大したことはないように感じますが、ここで同じ時間に公開予約したページが1,000ページあったとしましょう。公開処理に1秒かかったとして、最後に公開されるのは予約した時間の1,000秒後(約17分後)です。ここまでくると、大きな違いになってきます。

「できるレベル感」が違うとは、こういうことです。この違いが、各社の機能一覧の中に潜んでいます。安易に「できる」となっているから導入したが、運用してみたら実用に耐えられない事態も考えられます。

CMS選定において最も多い失敗が、表面的な機能比較で安いCMSを選んでしまい、「本当にやりたいことができない。こんなはずではなかった」というケース。その結果、「もっと性能の良いCMSを選ぼう」との思考になり、再度CMS選定に失敗するという悪循環が発生します。CMSの得意分野は各社異なりますので、「高価だからといって、求めていることが実現できるわけではない」点にも注意が必要です。

私の経験として、「CMSツールありき」でWebサイトをリニューアルすると、ほとんどの場合、失敗します。なぜなら、Webサイトに求める「成果」を意識することなくCMSが選ばれているからです。「CMSを使って何がしたいか」ではなく、「成果のために必要なことは何か」を考え、それが成し得られるCMSを選定すべきです。

まずは目的を明確にし、それが成し得られる最適な手法として、どのCMSが良いのかは、実際にWebサイトを構築する制作会社に相談すると良いでしょう。制作会社はさまざまなCMSの構築・運用経験があり、表面的な機能では見えてこないレベル感まで把握しています。

成果に貢献しない機能には注力せず、成果に貢献することにフォーカスした最適なCMSを選び、成果の実現方法自体も検討してくれるでしょう。

CMSは表面的な機能ではなく、明確な成果基準・目的を元に選びましょう。何が最適かは、実際に構築する制作会社とともに検討するべきです。

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