2024年に改正障害者差別解消法の施行により、Webアクセシビリティの適用が努力義務化されました。
これを受けて大企業を中心に導入が進んでいますが、自社サイトの特性や課題を踏まえて、実装内容や範囲を慎重に検討する必要があります。

ある大手上場企業様のサイトでは、ほとんどのページがWebアクセシビリティに非対応で、デザイン面にも課題を抱えていました。

そこで「Webアクセシビリティ導入のガイドライン作成」を起点に、多数の事業部を巻き込み、数万ページに及ぶ壮大なサイトリニューアルのプロジェクトを敢行。
定められた基準の完全達成はもちろんのこと、サイト全体の構造、デザイン、UI/UX設計を見直すことで問い合わせページや製品ページへのアクセスが6倍になっています。

プロジェクト概要


業種

BtoB向けメーカー様

規模

約1万ページ強

期間

約1年(ガイドライン作成3ヶ月、サイトリニューアル1年)

POINT

課題


課題


1万ページ強のボリュームあるサイトに対し、ほとんどのページでWebアクセシビリティ非対応


事業部ごとに異なるデザインやテンプレートが乱立


個別最適化していた各事業を横断し、専門家として取りまとめる役割を担う必要性があった

提案


提案


サイト全体構造やUI/UX・コンテンツの最適化を行い、基本は3クリック以内で目的のコンテンツにたどり着けるように動線を設計


多岐にわたる機能要件を満たすためにCMSを「NOREN」に変更し、テンプレートによる一元管理を実現


各部署へのヒアリング、交渉により、サイトリニューアルへの協力体制を確立

成果


成果


WebアクセシビリティはレベルA,AA(JIS X 8341-3:2016)に準拠し、定期検査もクリアを継続


問い合わせページへのアクセスは6倍に


製品詳細ページの閲覧数がリニューアル前後で「600%増」になったものも

背景/課題

「Webアクセシビリティのガイドライン制作」の
依頼から、サイト全体のリニューアルを受注へ

2024年の障害者差別解消法改正を見据え、3年前からご相談

2022年に当社セミナーを通じて交流のあった大手BtoB向けメーカー様より「Webアクセシビリティ導入のガイドライン作成」のご相談をいただきました。
ガイドラインは調査、実制作含め、3ヶ月で制作。ただ、その背景には10年以上リニューアルされていない、全体的な見直しが必要なサイト全体の構造的課題が存在していました。

そこで2023年の夏頃からCMSのリプレイスを含む、サイト全体のシステムの抜本的な改修を計画。その一環としてWebアクセシビリティを適用することを想定されていました。

Webアクセシビリティ導入ガイドラインイメージ

サイト全体の構造的課題について

まず、Webアクセシビリティについては、約1万ページ強あるWebサイトに対し、ほとんどのページで非対応でした。
サイト全体の構造は、トップページや企業情報配下、各サービスの扉ページなどのアクセスが多いエリアは比較的整備されていたものの、一部の製品詳細ページなどは運用の手が入れられておらず、10年以上前のデザインのまま放置されている状態で、レスポンシブ対応もできていませんでした。

また、ある事業部では独自に改善を重ね、最新のデザイン、LPを提供している一方で、他の事業部ではリンク切れやPDFのみの情報提供になってしまっており、コンテンツ、ユーザビリティ(使い勝手)に大きな差ができていました。
さらに、既存のCMSが実質HTMLファイル管理ツールになっており、CMS本来の一元管理、利便性などがほとんど活用されていませんでした。

Web制作の知見や専門性が、サイト改修受注の決め手に

ガイドラインの作成の過程で、先述の課題などに対し、一歩踏み込んだアドバイスを含めて、当社主導でディレクションを推進。
そこでWeb制作に関する知見や専門性に信頼が高まり、サイト改修の募集に先立って「Webサイトリニューアル提案をお願いしたい」とのお声がかかりました。

同時に、独自予算で個別最適化していた各事業のコンテンツを横断し、「専門家として取りまとめてほしい」との期待も寄せられました。
その後、正式にRFPを受けて、提案書を提出し受注に至りました。

プロジェクトのポイントや工夫

Web制作の専門家として各部署を横断し、
合意形成に注力

リニューアル後イメージ

1つ目の軸は、サイト全体構造やUI/UX、コンテンツの最適化でした。
3クリック以内で目的のコンテンツにたどり着けるようにユーザー視点に立った動線を設計。
加えてWebトレンドの取り入れやモバイルフレンドリー化を実装しました。

2つ目は、システム運用・セキュリティの強化です。
CMS本来の機能を最大限に活用でき、さらに多岐にわたる機能要件を満たすために「NOREN」に変更。テンプレートによる一元管理を実現しました。
また、アカウント権限やワークフローの再設計により、複数担当者による更新での安全性を担保した更新体制を構築しました。

3つ目は、コンテンツ管理業務の効率化になります。
当社独自のブロックテンプレート(陣JIN)を導入し、誰でも簡単に、フォームを入力するようにページを作成できるシステムを導入。
作成されたページは自動的にWebアクセシビリティ要件を満たすため、CMSで作成された全てのページに対して品質の平準化も実現しています。

複数の事業部を周り、丁寧に説得

「事業部ごとに見せたいデザインがバラバラ」で、意思統一が図れていない状態だったため、全事業部の担当者と面談しました。
コロナ禍だったことから基本的にはリモートでしたが、必要に応じて直接訪問も実施。
2ヶ月ほどかけて地道にWebアクセシビリティ適用やUI改善の必要性を説いて回ることで、説得に成功しました。

その際、各事業の要望をヒアリング、汲み取り、新サイトにその意向をなるべく反映することで、満足度を向上しました。

当社の強みを最大限に活かしたプロジェクト

アクセスログ解析、キーワード調査を行ったことで、ウィークポイントの定量的な把握が可能になりました。
こうしたデータを土台として、先方の要望だけでなく「こうあるべき」という潜在的な課題を抽出。
単なるWebアクセシビリティの適用やサイト改修にとどまらず、UI/UXや運用面も含めた総合的な提案につなげられました。

成果

全ページ達成基準をクリア。アクセス数「600%」になった製品ページなど劇的な数値を実現

Webアクセシビリティ基準の完全達成

試験を実施したすべてのページがレベルA,AA(JIS X 8341-3:2016)に準拠。
同社のコーポレートサイトでCMSで構築する全てのページにて達成基準をクリアしました。
定期検査も継続実施し、常にWebアクセシビリティ基準を維持した状態を保っています。

製品ページや問い合わせページへのアクセスが激増

サイトの最適化及び、全ページに適切な問い合わせフォームへの動線を設置したことで、ユーザーが必要なタイミングですぐにアクションできる仕様に。
サイトリニューアル後、問い合わせページにはリニューアル前と比べて6倍のアクセス数という驚異的な数字に激増しました。
製品詳細ページへのアクセス数も、訪問クリック数を減らした効果により発見性が高まり、中には「600%増」を記録したページも。

ウェブアクセシビリティ、UI/UXの改善により、アクセスが増加

約1年がかりのプロジェクトに感謝の声

「1万ページを移行させる」という物理的な大変さや、すべての画像に画像補足文言(alt設定)を入れるなど苦労することもありましたが、クライアントからは「Webアクセシビリティが適用されて安心した」「1年以上の大規模プロジェクトで完遂できるか不安だったが、最後まで伴走してくれて感謝している」といった声をいただいています。

加えて、CMSの最適化やセキュリティ面の強化、サイト内検索やCookie同意ツールなど、クライアントの要望以上の提案に対応したことで、リニューアルとは直接関係ない相談も受けるほどの深い関係性の構築に至りました。

メッセージ

Webアクセシビリティ適用を、「よりユーザーに優しいサイトづくり」へ取り組む機会に

知見を存分に活かした提案で、クライアントのWeb戦略を大幅に改善へ

今回のプロジェクトは、私たちの持つWeb制作の知見やメソッドをセミナーなどでご存知の上でWebアクセシビリティのガイドライン作成から始まりました。
そして、ともに業務を推進する中でワンランク上の提案により、さらなる信頼を得たことで「1年間で1万ページに及ぶサイトリニューアル」へと発展しました。

これは、世の中のWeb担当者の多くが「現在のサイトより、改善を推し進めたい」という飽くなき探究心を持っていることの証左であり、今後も当社は専門家集団としてクライアントに寄り添い邁進します。

「すべてのユーザーに優しい」サイトづくりを

Webアクセシビリティを起点として、「すべてのユーザーに優しく、使い勝手のよいサイト」を目指してほしいと考えています。
そのために当社では「一度のお付き合い」で終わることなく、ユーザーにとって最適なサイトであり続けるように、定期的な分析や効果測定を実施しています。

Web担当者応援マガジン

がんばれ!Web担当者

属人化の嵐の中で、時間と各部署とそして上司と戦うWeb担当者のために


Vol.01

失敗しないための
引継ぎしない、引継ぎの仕組み

大規模CMS成功の法則