サイト運用において、スピーディーにPDCAを回すには、流入数など各種データの即時性をもった見える化が必要不可欠です。

ある大手情報サービス会社様は、Excelを使用して手動でデータレポートを作成し、PDF化して共有しており、リアルタイムでの確認や効果把握が難しいという課題がありました。

そこで、サイト運用データのレポートページを直感的に把握できるようダッシュボード化。リアルタイムで把握できる仕様になり、レポート作成にかかる工数や時間がゼロになっただけではなく、他部署との連携もシームレスになりました。

プロジェクト概要


業種

情報サービス業

規模

4種類のレポートページ×2カテゴリ分のコンテンツ

期間

約3ヶ月

POINT

課題


課題


月次のアクセス解析の結果をExcelで作成し、PDFで他部署に共有するフローによってタイムラグが生じている


データ分析がリアルタイムでできないことにより、施策の実施が遅れている


抽出を優先度の高いデータに絞っているため、多面的な分析やサイト間の連携が難しい

提案


提案


既存のレポートページをダッシュボード化し、直感的にわかりやすくデータを見える化


BigQueryを用いることで、将来的なデータ基盤構築や拡張の実装にも対応


サイトの連携を実施し、複数ドメインをまたぐユーザー行動を可視化することで、プロセス全体の追跡を実現

成果


成果


Excelによるデータ抽出時間と、部署間での共有時間をゼロに


広告運用面の費用対効果の向上に寄与し、該当コンテンツのPVが直近で30%向上


Webチームと製品開発者の認識の乖離を解消し、数字を起点とした意思決定を促進

背景/課題

手動の月次レポート作成が原因で、リアルタイムでのデータ把握や施策立案が困難

サイト運用におけるデータ分析は、ただレポートを作成するだけでは意味がなく、いかに施策や成果につなげられるかが重要です。
今回紹介する大規模情報サービス会社様では、5年以上前から当社がWebサイトのリニューアル構築や運用に携わってきました。
弊社が2024年2月に開催したセミナーを受講後、5月にWeb担当者様より
「アクセス解析のみならず、リアルタイムの流入数などを可視化できないだろうか?」
とご相談をいただいたのが、今回のサイト運用データの見える化プロジェクトのスタートでした。

ご相談を受けて、抽出した課題は主に3つでした。
1つ目は「Excelを使用して手動で作成したレポートを、PDFで他部署に渡していること」による、タイムラグの発生。
2つ目はその仕組みが固定化されており「リアルタイムで施策を展開できない」点です。
3つ目は「本来はもっと分析したい観点はあるが、限定された結果しかわからない。
そのため多面的な分析が難しい」という内容でした。
自動・可視化が進めば、各部署間で情報共有が可能になり、同社が手がける各種サービスや製品をタイムリーにユーザーに届けられます。

また、ヒアリングを通じて「サイト上でCVRを追いきれていない」「サイト同士の連携がとれていない」といった問題点も浮かび上がってきました。
さらに将来的には展示会情報やDMリスト、営業用のリード情報なども取り込める「分析の基盤自体を構築していきたい」という要望をお持ちでした。
また、当初はお客さま自身が最終的にどういうものを作り上げるのかというのを、明確にイメージしていたわけではありませんでした。
そこでまずは優先的に推進すべき課題として、上記3つを切り出して提案しました。

情報整理と一貫性、運用効率を高めるリニューアル

プロジェクトのポイントや工夫

「見える化」によりリアルタイム分析を可能にし、将来的なデータ基盤構築にも対応

まずはWebチームやクライアントにとって、リアルタイムで知りたい重要なデータである、既存のレポートページをダッシュボード化。
直感的にわかりやすく見える化しました。

アクセス数や日別といった基本的な部分については、以前当社が制作したフォーマットを導入していただいていました。
今回工夫した点としてはクライアントの課題に即してデータをグラフ化。
例えば「広告からの流入」などの流れが瞬時に把握できるビジュアライゼーションに注力したことがあげられます。
また、案件化や受注金額といったGAに入ってこないデータを取り込み、案件化までの流れがわかるようにしています。
プロジェクトは、3名のエキスパートが中心となって開発しました。

各種データを元にコンテンツを整理

あとはサイトの連携です。
連携に加えて、GA4のみでは取得できない「案件化数」や「受注金額」などの情報を、別システム上のデータとして取り込み、レポートに統合。
また、複数ドメインを行き来するというハードルもあったのですが、ユーザー行動を可視化する工夫を行ったことで、一般的なファネル分析にとどまらず、ビジネス成果へと至るプロセス全体を追跡できるようになりました。

また、今回のプロジェクトは「具体的にこういうレポートを作りたい」という要望ではなく、あくまで「最終的にこうしたい」というビジョンに対して第一段階として実装したものです。
そのため、BigQueryなどを活用し、将来的なデータ基盤構築や拡張にも備えています。

成果

データ抽出や部署間共有にかかる工数を削減し、部署間の認識ズレ解消にも貢献

まず、定量面では「Excelによるデータ抽出時間がゼロ」「部署間での共有時間ゼロ」というドラスティックな成果を実現。
加えてリアルタイムのデータの直感的理解の促進や、広告運用面のPDCAサイクルの最適化による費用対効果の向上といった、データドリブン領域にも寄与しました。
さらに具体的な数値として、「サイトの連携」において改善を繰り返し、該当コンテンツのPVを直近で30%伸ばしました。

定性面では、今回のプロジェクト以前にはWebチームと製品開発者の間に、商品などに対する認識のズレが生じていました。

例えば、開発側の「売れない理由はここが原因では?」という想像に対して、Webチーム側は「ユーザーの行動分析の結果、実際のボトルネックは別のところに存在する」と捉えており、お互いの視点に乖離があるといったケースです。

しかし、今は見える化されたレポートにより、具体的な数字を起点に部署間を超えて「改善すべき点の洗い出し」や「どこにリソースを集中させるか」といった意思決定が可能になりました。

情報整理と一貫性、運用効率を高めるリニューアル

また、SEO対策においても、以前は「こんなコンテンツがあれば、集客につながるのでは?」といった他部署からの提案に対して、
Webチームは「データ分析の結果、違うキーワードの方が流入数の質が良い」と見解が食い違う場面もあったそうです。

しかし現在は、数字を軸におき、同じベクトルでコミュニケーションを図れるので「業務に対する解像度が鮮明になった」と好評をいただいています。

さらに今回のサイト運用データの見える化実現により、クライアントからの要望の確度も高まりました。
現在も改修の依頼などを受けながら、日々アップデートを継続しています。

メッセージ

Webサイトの可能性を無限大に引き出すには、「見える化」を起点に、内製化と他部署との強固な関係構築が重要

Webサイトは制作して終わりではなく、運用・改善を繰り返すことで、効果の最大化を目指す必要があります。

ここで重要なのは、企業ごとにKPIや指標が変わってくるため、「軸となる定義」をあらかじめ明確に設定しておくことです。
サイト運用データを見える化することで、リアルタイムに多様な数値を正確に把握できるようになり、軸となる定義の設定も容易になります。

加えて、Webサイトに対してWeb担当者やWebチームのみが携わるのでなく、部署間を横断するような協力体制の構築も重要です。
縦割りになることなく、部署の垣根を超えて普段から積極的なコミュニケーションを図ることで、多角的な視点による分析が可能になります。
また、一般論として「外部パートナーにデータ分析を依頼し、月次レポートを受け取る」という運用方針の企業が多く存在しますが、この体制では結果しかわからないため、改善ポイントを見つけられないといったブラックボックス化に陥りがちです。

そうした状況を打破するのが内製化です。
社内にノウハウを貯めていくことで、Web担当者やWebチームが成長し、新たな施策の立案などにつながります。

もちろん、そのためには部署間を横断した協力体制が不可欠です。
常日頃から営業やマーケティングといった他部署にデータ活用によるメリットを伝えるなど、意識改革を促すことで、企業全体のパフォーマンス向上へとつながるのです。

Web担当者応援マガジン

がんばれ!Web担当者

属人化の嵐の中で、時間と各部署とそして上司と戦うWeb担当者のために


Vol.01

失敗しないための
引継ぎしない、引継ぎの仕組み

大規模CMS成功の法則