SNSの普及により、テキストによるコミュニケーションはより手軽なものとなりました。
LINE等のツールで日常的に家族や友人とチャットしている方も多いことでしょう。
しかし、そうした気軽なコミュニケーションのトーン&マナーを、ビジネス系のWebサイトに持ち込む場合は、注意が必要です。
今回は「話し言葉」と「書き言葉」について書いていきます。
「話し言葉」とは、大まかには私たちが会話で使っている言葉です。
相手との距離感が近く、親しみやすい印象を与えるため、ビジネス系のWebサイトでも、例えば「中の人」として発言する場合などには有効な表現です。
しかし、サービス説明や仕様など情報を正確に伝えなければならない箇所で「話し言葉」を使うのはおすすめしません。
例えば自社製品の資料に誘導する文言が、下記のように表記されていたら、どう感じますか?
百歩譲って、これが新入社員の発言であれば、一応理解はできます。が、この文言をそのままWebサイトに記載してしまうと、ユーザーにとって意味が分かりにくいばかりか、貴社のブランドも問われかねません。
この場合は、下記のように「書き言葉」で表記するのが適切です。
上記ほど極端な例ではないとしても、つい書きがちな「話し言葉」の表現は幾つかあります。
代表的なものを以下にまとめてみました。
1は「ら抜き言葉」、2は「い抜き言葉」と呼ばれており、Webサイトを閲覧していてもよく目にします。
また、9の「~的には」など新しい話し言葉の表現は、読み手によっては意味が通じないため、注意が必要です。
社会生活を営む上で、「礼儀」は欠かせません。
江戸時代の儒学者・貝原益軒(かいばら えきけん)は、礼儀について次のように記しています。
益軒の著書「養生訓」が当時のベストセラーとなったのも頷ける、とても分かりやすい例えです。
堤防が川の氾濫をせき止めるように、礼儀はコミュニケーション上の軋轢(あつれき)を防いでくれるのです。
「話し言葉」は、話し手と聞き手の関係性を前提に成り立つもの。使いどころを間違えると、書き手の意図と異なる印象を読み手に与えたり、不必要な感情を生みかねません。
その点、理路整然とした「書き言葉」は、読み手の「解釈」を受け付けず、誰が読んでも分かりやすいというメリットがあります。
正確に情報を伝えたい場面では、「書き言葉」を使うことをおすすめします。
捉えられ方にブレが無い=明快な文章は、当然SEOにも有効です。
今の検索エンジンは、コンテンツに接した後のユーザーの行動を見ています。閲覧後に即検索が終了すれば、そのコンテンツがユーザーの問題を解決したと評価されます。
そのためには、コンテンツ(文章)が、誰が読んでも分かりやすく記述されていることが大前提となります。せっかくの良いアイデアや情報も、適切に表現されていなければ、ユーザーは失望して他のサイトに遷移してしまいます。
この連載で記している文章術は、別段新しいものではありません。
しかし、年間300本近いコンテンツを制作し、一本一本の検索結果を注視してきて感じることは、SEOに強い文章を書くには、日本語の基本を徹底するのが一番の近道だということです。
なぜTPOを顧みず、「話し言葉」で文章を書いてしまうのでしょう?
その理由は、皆さんが「話し言葉」「書き言葉」の違いについて、国語教育でほとんど教えられてこなかったからです。
問題を認識していなければ、対処のしようがないのは当たり前です。
まず、自分が当たり前のように書いている文章が「話し言葉」になっていないか、見直すところから始めましょう。
実は、ポイントはさほど多くありません。一度気づいてしまえば、修正に時間はかからないはずです。